東京高等裁判所 昭和50年(行ケ)80号 判決
以下は、判例タイムズに掲載された記事をそのまま収録しています。オリジナルの判決文ではありません。
【説明】
原告 松下電器産業株式会社
右訴訟代理人弁理士 武田元敏
被告 特許庁長官
熊谷善二
右指定代理人 石井康夫
外一名
〔主文〕
特許庁が昭和五〇年五月二八日同庁昭和四四年審判第二三〇一号事件についてした審決を取消す。
訴訟費用は被告の負担とする。
「当事者の主張
一 請求の原因
(一) 特許庁における手続の経緯
原告は昭和四一年四月一三日特許庁に対し、名称を「ダイヤル照明装置」とする考案につき実用新案登録出願をしたところ、昭和四四年二月四日拒絶査定を受けた。そこで、原告は、昭和四四年四月三日適法に審判を請求し、同年審判第二三〇一号事件として審理されたが、昭和五〇年五月二八日、「本件審判の請求は成り立たない。」旨の審決がなされ、その謄本は同年六月一六日原告に送達された。
(二) 本願考案の要旨
パイロツトランプの前方に設けたダイヤル板を半透明な合成樹脂材料で形成すると共にその前面の目盛、文字等の表示部を除く全面は光を遮蔽する暗黒色の物質で覆い、ダイヤル板の前方には有色透明でパイロツトランプからの光は通し、外部からの光を遮蔽する作用をなす保護板を設けたダイヤル照明装置。」
【判旨】
(二) そこで、本願考案においてダイヤル板の保護板として有色透明板を採用したことの意義について考えてみる。
1 第二引用例に示されている乳色硝子板は、内面に半透明塗装を有する乳白色のものであつて、その背後の凸起した表示文字を有し表面を半透明塗装で塗覆した表示硝子と相俟つて、単に、表示硝子の後方の電灯を点じた時には、表示硝子の表面の文字が乳色硝子板を透過して目認でき、また電灯を消した時には表示文字を目認できないようにするに過ぎないものであるから、第一引用例の目盛板(これが本願におけるダイヤル板に相当することは当事者間に争いがない。)装置に第二引用例の乳色硝子板を施しても、本願考案のように、ダイヤル板と保護板との間に暗やみ部を生ぜしめ、パイロツトランプの点灯時にはダイヤル板前面の目盛文字等が明るく浮き上つて明瞭に見えるようにし、消灯時にはダイヤル板前面を暗黒状態にするという効果を奏することができないことは当事者間に争いがない。
2 ところが、被告は、右効果のうち実用新案法によつて保護される考案としての効果は、パイロツトランプの点灯時において奏する効果、およびパイロツトランプの消灯時において奏する効果のうち表示文字を目認できないよう単一色(特定色でなく)にする限度の効果に過ぎないという主張をしている。
その主張の趣旨は、パイロツトランプ消灯時に茶、黒等特定色の透明板でダイヤル板前面を「暗黒」に保つことは嗜好の問題であり、意匠としての保護はともかく、実用新案としての保護を受けるための効果にはあたらないというにあると解されるところ、「暗黒」にするかどうかがたとえ嗜好、意匠の問題であるにせよ、ランプ消灯時にダイヤル板前面を遮光により表示部分を目認不能(またはほとんど不能)にする効果およびランプ点灯時における前記のような効果(これが技術的な効果であることは被告も争わない。)をあわせて目途とし、ランプからの光はよく透過し外部からの光は遮蔽する自然法則上の作用をもつ有色透明板を採用したことによる右効果は、一つの技術的思想の産物と解することができる。
なお、本願考案は、端的にいえば、パイロツトランプの点灯時にはダイヤル板の表示文字等を目認でき、消灯時には目認できないようにするという効果を奏することは明らかであるが、それだけならば、第一引用例に第二引用例を施したものでもともかく奏することができる(もつとも第二引用例の乳色硝子板では、ダイヤル等の精密な表示は読みとることが困難であろうが)ことは審決のいうとおりである。しかし、本願考案は、その奏する前に述べたようなそれ以上の効果を目的とし、ダイヤル板の保護板として第二引用例の乳色硝子板に代えて有色透明板を採用したものであり、これが本願考案の特徴をなすものということができる。
(小堀勇 舟本信光 小笠原昭夫)